企業結合


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3 企業結合規制

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企業結合規制処理手順

@事案分析                  ※重要!公取委の企業結合審査フローチャート

A適用条文確定(=行為主体・行為の認定)      →規制対象か否かの判断

B市場の画定                         →他の市場概念とほぼ同じ

C競争制限効果の蓋然性の認定              →ここがメインになる

Dその他(問題解消措置、実効性確保、事後的救済)  →問題解消措置は特有

条文

10条1項     会社の株式取得・所有※ (11条不要、12条削除) 

13条1項     役員兼任

14条       会社以外の者による株式取得・所有

15条1項     合併※

15条の2第1項 共同新設分割・吸収分割※

15条の3第1項 共同株式移転※

16条1項     事業譲受け等※  (17条→9条〜16条の脱法行為の禁止)

印には事前届出義務あり(30日前) 上記各条文が定義規定、禁止規定を兼ねている。

条文文言

第10条T 会社は他の会社の株式を取得し、又は所有することにより一定の取引分野における競争を実質的に制限することと
なる場合
には、当該株式を取得し、又は所有してはならず、及び不公正な取引方法により他の会社の株式を取得し、又は所有して
はならない。

第13条T 会社の役員又は従業員(継続して会社の業務に従事する者であつて、役員以外の者をいう。以下この条において同
じ。)他の会社の役員の地位を兼ねることにより一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該役
員の地位を兼ねてはならない。

第14条 会社以外の者は会社の株式を取得し、又は所有することにより一定の取引分野における競争を実質的に制限することと
なる場合
には、当該株式を取得し、又は所有してはならず、及び不公正な取引方法により会社の株式を取得し、又は所有してはなら
ない。

第15条T 会社は、次の各号のいずれかに該当する場合には、合併をしてはならない。

@ 当該合併によつて一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合

A 当該合併が不公正な取引方法によるものである場合

第15条の2T 会社は、次の各号のいずれかに該当する場合には、共同新設分割(会社が他の会社と共同してする新設分割をい
う。以下同じ。)をし、又は吸収分割をしてはならない。

@ 当該共同新設分割又は当該吸収分割によつて一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合

A 当該共同新設分割又は当該吸収分割が不公正な取引方法によるものである場合

第15条の3T 会社は、次の各号のいずれかに該当する場合には、共同株式移転(会社が他の会社と共同してする株式移転をい
う。以下同じ。)をしてはならない。

@ 当該共同株式移転によつて一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合

A 当該共同株式移転が不公正な取引方法によるものである場合

第16条 会社は、次に掲げる行為をすることにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該
行為をしてはならず、及び不公正な取引方法により次に掲げる行為をしてはならない。

@ 他の会社の事業の全部又は重要部分の譲受け (※A〜D省略)

実効性確保手段
(エンフォースメント)

@排除措置命令(17条の2) ※課徴金納付命令制度なし

A合併等の無効の訴え(18条)

B刑事罰(91条、91条の2、95条の2等)

民事救済手段

不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条) 法25条不可

市場効果要件の「一定の取
引分野」(=市場)の画定の
手順、考慮要素

@ 考慮要素1 

企業結合形態

  @) 水平型 → 競争関係にある企業間の結合  例) JALとJAS

  A) 垂直型 → 取引段階を異にする企業間の結合  例) 原材料会社と製品会社

  B) 混合型 → 水平でも垂直でもない企業結合 例) 洗剤製造と漂白剤製造

@ 考慮要素2 

取引の対象(商品,役務)の範囲取引の地域(地理的範囲)取引の段階取引の相手

   ※取引の地域  → 全国・地方

   ※取引の段階  → 製造・卸売・小売、部品・製品

   ※取引の相手方 → 大口需要者・小口需要者、業者・一般消費者

あまり問題にならなさそうであれば、これらを考慮してさくっと認定してよい。

A 画定方法

 一定の取引分野(市場)とは、供給者群と需要者群との間で競争が行われる場であるから、上記考慮要素をもと
に、まずは、需要者にとっての代替性を検討する。需要者から見て、対象の商品、役務の機能や効果が同種で
あれば、需要代替性があり、そこに限定された市場はない。また、補充的に供給者にとっての代替性も検討す
る。特に新たな設備投資をしなくても本件の商品、役務が供給できるのであれば供給代替性があり、そこに限定さ
れた市場はない。需要代替性がない、供給代替性がないという場合に、その範囲を市場と画定する。

市場効果要件「競争を実質
的に制限することとなる」の
意義・と観点

@意義

 競争を実質的に制限することとなる → 市場支配力を形成、維持、強化する蓋然性

 ※市場支配力は、主に、価格支配力 → 当該市場の価格を自由に設定できる力

A考慮要素

@)当事会社グループの単独行動による市場支配力の形成・維持・強化の蓋然性と

A)当事会社グループと競争者の協調的行動による市場支配力の形成・維持・強化の蓋然性の両方の観点から
検討する。単独行動の場合は他の市場効果要件とほぼ同じと考えてよいが、協調的行動の場合は、協調的行動
がとられやすいか否かという視点をもつこと。

市場効果要件「競争を実質
的に制限することとなる」の
考慮要素

単独行動による競争の実質的制限の場合

協調的行動による競争の実質的制限の場合

<当事会社グループの地位及び競争者の状況>

 ・市場シェア及びその順位
 ・当事会社間の従来の競争の状況等

 ・競争者の市場シェアとの格差

 ・競争者の供給余力及び差別化の程度

 ・競争者の数等

 ・当事会社間の従来の競争の状況等

 ・競争者の供給余力

<輸入>

 ・制度上の障壁の程度

 ・輸入に係る輸送費用等の問題

 ・輸入品との代替性の程度

 ・海外の供給可能性の程度

<参入>

 ・制度上、実態面での参入障壁の程度

 ・参入者の商品との代替性の程度

 ・参入可能性の程度

<その他>

 ・隣接市場からの競争圧力

 ・需要者からの競争圧力

 ・総合的な事業能力

 ・効率性、経営状況

<取引の実態等>

 ・取引条件

 ・需要動向

 ・技術革新の動向

 ・過去の競争状況

<その他>

 ・輸入

 ・参入

 ・隣接市場からの競争圧力

 ・需要者からの競争圧力

 ・当事会社グループの経営状況

 ・競争者の経営状況

 ・効率性

各々総合勘案し、いずれかが競争の実質的制限の蓋然性ありとされれば足りる。

違法性阻却の有無

条文上「公共の利益に反して」の文言はないが、法1条に照らし、私的独占等と同様にあり。

企業結合による効率性の抗弁の例

 →シナジー効果、価格引下・品質向上等の需要者の利益、またそれらの実現可能性

問題解消措置の類型

(具体例)

適切な問題解消措置がなされると、排除措置命令がなくなるので実務上重要

<類型>

@新規の独立した競争者を創出する措置

A既存の競争者が有効な牽制力を有することとなるよう強化する措置

B輸入・参入を促進する措置

C当事会社グループの行動に関する措置

<具体例>

@Aの具体例

 当事会社グループの事業部門の全部又は一部の譲渡、当事会社グループと結合関係にある会社の結合関係
の解消
議決権保有の取止め又は議決権保有比率の引下げ役員兼任の取止め等)、第三者との業務提携の
解消など、

 需要が減少傾向にあるなどのために、当事会社グループの事業部門(例えば、製造販売・開発部門)の全部又
は一部の譲受先が容易に出現する状況になく、商品が成熟しており、研究開発、需要者の要求に応じた商品の
改良などのサービス等が競争上あまり重要でないなど特段の事情が認められる場合には、競争者に対して当該
商品の生産費用に相当する価格での引取権を設定する(長期的供給契約を締結する)こと

Bの具体例

 輸入に必要な貯蔵設備や物流サービス部門等を当事会社グループが有している場合、それらを輸入業者等が
利用できるようにし、輸入を促進すること

 当事会社が有している特許権等について、競争者や新規参入者の求めに応じて適正な条件で特許権につい
ての実施許諾
等をすること

Cの具体例

 商品の生産は共同出資会社において行うが、販売は出資会社がそれぞれ行うこととしている企業結合の場合、
出資会社相互間及び出資会社と共同出資会社間において当該商品の販売に関する情報の交換を遮断するこ
と、共同資材調達の禁止など独立性を確保する措置を講じること

ハーフィンダール・ハーシュ
マン・インデックス
(Herfindahl-
HirschmanIndex、HHI)の
意義

 市場における企業の競争状態を表す指標の1つで、当事会社の市場占有率(シェア)を各々2乗して合算したも
の(2乗和)。公取委は企業結合規制において競争を実質的に制限することとならないセーフハーバー設定の基
準に用いている。

 例) A社、B社が当事会社グループで、シェアがそれぞれ、15%、10%である場合

    →HHIは15×15+10×10=325となる。

    A社、B社が当事会社グループで、シェアがそれぞれ、35%、20%である場合

    →HHIは35×35+20×20=1625となる。


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