不公正な取引方法(前半)


スポンサーリンク


4−1 不公正な取引方法(前半)

スポンサーリンク


不公正な取引方法の種類
(定義規定)

   









































































 共同の取引拒絶(2条9項@、一般指定1項)※2条9項@は共同の供給拒絶のみ

 その他の取引拒絶(2条9項Eイ一般指定2項)

 差別対価(2条9項A、一般指定3項)     ※2条9項Aは供給における差別対価のみ

 差別的取扱い(2条9項Eイ、一般指定4項)

 事業者団体における差別的取り扱い等(一般指定5項)

 不当廉売(2条9項B、一般指定6項)

 再販売価格拘束(2条9項C)

 優越的地位の濫用(2条9項D)
 不当高価購入(2条9項Eロ、一般指定7項)

 ぎまん的顧客誘引(2条9項Eハ、一般指定8項)

 不当な利益による顧客誘引(2条9項Eハ、一般指定9項)

 抱き合わせ販売等(2条9項Eハ、一般指定10項)

 排他条件付取引(2条9項Eニ、一般指定11項)

 拘束条件付取引(2条9項Eニ、一般指定12項)

 取引の相手方の役員選任の不当干渉(2条9項Eホ、一般指定13項)

 競争者に対する取引妨害(2条9項Eヘ、一般指定14項)

 競争会社に対する内部干渉(2条9項Eへ、一般指定15項)

禁止規定

19条 → 事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。

「不当に」「正当な理由が
ないのに」の意義


正当化要素

公正競争阻害性 

 @自由競争減殺効果    → @)競争者排除効果 又は A)競争回避効果

 A競争手段の不公正    → 購入者の商品選択等の自由が制限されること

 B自由競争基盤の侵害   → 取引主体が取引の諾否や条件設定につき、

  (=契約当事者の不対等)   自由かつ自主的な判断が困難になること

「正当な理由がないのに」 → 原則該当=違法

 「不当に」           → 原則不該当=適法

正当化要素

 @目的の合理性

 A方法の相当性

 →@Aがあれば、公正競争阻害性がなくなる。 ※要件を分けずに組み込むのが公取委の立場

実効性確保手段

(エンフォースメント)

@排除措置命令(20条

A課徴金納付命令(20条の2〜20条の6) 通常の課徴金は優越的地位の濫用のみ

累積違反課徴金制度(20条の2〜20条の5) 不公正な取引方法の課徴金の原則

  ※10年以内に同じ違反類型を2回繰り返した場合、2度目の違反に課徴金が課される

B直接の刑事罰なし

確定排除措置命令違反(90条B、95条TA、同UA、95条の2、95条の3等)

民事救済手段(エンフォ
ースメント)

@不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)

A差止請求(24条)

B独禁法25条Tに基づく損害賠償請求※無過失責任(25条U)、審決前置主義(26条)

排除型私的独占と不公正
な取引方法が競合した場
合の処理手順

@まず、不公正な取引方法を論じる。

Aその後に、排除型私的独占にも該当しうることを指摘して論じる。

私的独占も成立する場合は、私的独占がメインになる可能性が高い(バランス注意)。

 例)「A社の本件行為は、公正競争阻害性を超え、本件市場における競争を実質的に制限し、独
禁法2条5項で定義され、同3条前段で禁止される排除型私的独占にも該当しないか。」→排
除行為の認定「A社の本件行為は、独禁法2条9項1号及び一般指定1項が定義し、独禁法19条が
禁止する共同の供給拒絶に該当するにとどまらず、このような違法な手段を通して、他の事業者に
よる新規参入を阻止しているのであるから、「他の事業者を排除」したといえる。」

共同の供給拒絶(条文)

 ※供給制限も含む

2条9項@ → 共同の供給拒絶

 正当な理由がないのに競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。

イ ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を
制限する
こと。 <直接>

ロ 他の事業者にある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の
数量若しくは内容を制限させる
こと。 <間接>

一般指定1項 → 共同の取引拒絶

 正当な理由がないのに、自己と競争関係にある他の事業者(以下「競争者」という。)と共同して
次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。

 @ ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶し、又は供給を受ける商品若しく
は役務の数量若しくは内容を制限する
こと。 <直接>

 A 他の事業者にある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶させ、又は供給を
受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させる
こと。 <間接>

共同の供給拒絶の要件

@行為主体要件 → 複数かつ競争関係にある事業者

A行為要件 →@)「共同して」=意思の連絡があること

A)イ ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を
制限する
こと。 <直接>

  ロ 他の事業者に、ある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の
数量若しくは内容を制限させる
こと。 <間接>

  ※「させる」→要求行為と、それに従い実行しているという事実で足りる

市場の確定 → 条文にはないが一応認定しておく

B効果要件 → 「正当な理由がないのに」=公正競争阻害性

           本件の共同の供給拒絶により、自由減殺効果が生じる。

@競争者排除効果 → 供給拒絶された事業者は、容易には代替的供給先をみつけ
られなくなる
のが通常である。本件でも〜

A競争回避効果 → 供給拒絶された事業者は、競争行動が制約されるのが通常であ
る。本件でも〜

ただし、正当化要素(@目的の合理性A方法の相当性)があれば、公正競争阻害性は認めら
れない。 
※要件を分けずに組み込むのが公取委の立場。

 商品の安全性確保目的          ※東芝エレベーターサービス事件

・ 集荷量の確保及び価格の安定化目的 ※東京都屠畜場事件

・ 経営上・取引上の合理性  

その他の取引拒絶

条文と要件のポイント

一般指定2項 → その他の取引拒絶

 不当にある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若し
くは内容を制限し
、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること。


<要件のポイント> ※要件は、共同の取引拒絶とほぼ同じなので、相違点をおさえる。

 ・行為主体は、単独の事業者、又は競争関係にない複数の事業者

 ・行為要件は、供給のみならず取引一般に関する拒絶、制限を広く含む。

 ・単独の事業者による場合は、有力な事業者(目安:シェア10%以上で上位3位以内)

 ・「不当に」型なので原則適法(私的自治の原則→取引先選択や取引条件は自由)

  →独禁法上、違法又は不当な目的のもとに行われる取引拒絶であれば違法

  例)再販売価格の拘束や排他条件付取引の実現手段として取引拒絶がなされる場合×

    競争者の排除や競争行動の中止を目的として取引拒絶がなされる場合×

取引拒絶と不当な取引制限との関係・処

 不公正な取引方法としての取引拒絶に該当し、さらに、それが当該市場における価格支配力の
形成・維持・強化するにいたっている場合は、不当な取引制限も成立
する。

差別対価(条文)

2条9項A     ※2条9項Aは供給における差別対価のみ

 不当に地域又は相手方により差別的な対価をもつて商品又は役務を継続して供給す
ること
であつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの

一般指定3項 差別対価全般

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(〜略〜)。第二条第九項第二号に該当す
る行為
のほか、不当に地域又は相手方により差別的な対価をもつて商品若しくは役務を
供給し、又はこれらの供給を受ける
こと。

差別対価の要件

<供給における差別対価(2条9項A)の要件>

 @行為主体 → 有力な事業者 ※後掲

 A行為要件 → 地域又は相手方により差別的な対価をもつて

            →実質的に同一な商品・役務の対価に差異があること

            継続して → 相当期間にわたり、繰り返されていること

            商品又は役務を供給すること

 ※市場の画定 →@行為者の属する市場・A取引の相手方の属する市場を検討 

 B効果要件 → 不当に他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの

            →公正競争阻害性 → 自由競争減殺効果(競争者排除・競争
回避)

            @行為主体が有力な事業者(目安シェア10%以上・上位3位以内)

            A対価が正常な競争を反映したものといえるか否か<原価割れ>

            B行為者の市場および相手方の市場の自由競争減殺効果の有無

            「不当に」型なので原則適法(私的自治の原則→対価の決定は自由)

            →独禁法上、違法又は不当な目的の差別対価であれば違法

            例)再販売価格拘束,排他条件付取引の実現手段としての差別対価×

              競争者の排除や競争行動の中止を目的とした差別対価×

 ただし、正当化要素(@目的の合理性A方法の相当性)があれば、

  公正競争阻害性は認められない。※要件を分けずに組み込む(公取委の立場)

公取委の考慮要素→行為者の意図・目的、取引価格・取引条件の格差の程度、供給に
要する費用と価格との関係、行為者及び競争者の市場における地位、取引の相手方の状況、取
引形態等を総合的に勘案する。

<差別対価を「一般指定3項」で処理する場合>

 →上記の要件との差異をおさえる。

 @供給を受ける側が行為主体となっている場合

 A継続していると認められない場合

 B原価割れに至らない場合 ←「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」は認められない場合

差別的取扱い(条文)

一般指定4項

不当にある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取扱いをする
こと。

2条9項Eイ

 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそ
れがあるもの
のうち、公正取引委員会が指定するもの

 イ 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。

差別的取り扱いの要件

差別対価との相違

要件のうち、行為主体、行為要件は条文そのまま、他の要件は差別対価と同様に考える。

差別対価との違いは、取引条件のうち、対価以外の条件であれば差別的取り扱いで処理。

事業者団体における差別的

取り扱い等(条文)

一般指定5項

事業者団体若しくは共同行為からある事業者を不当に排斥し、又は事業者団体の内部若しくは共
同行為においてある事業者を不当に差別的に取り扱い、その事業者の事業活動を困難にさせるこ
と。

不当廉売(条文)

2条9項B

 正当な理由がないのに商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継
続して供給すること
であつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの


一般指定6項

 法第二条第九項第三号に該当する行為のほか、不当に商品又は役務を低い対価で供給し
の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること

不当廉売の要件

<2条9項Bと一般指定6項との相違>

<不当廉売(2条9項B)の要件>

 @行為主体 → 有力な事業者

 A行為要件 →「供給に要する費用を著しく下回る対価で」

            →実質的な仕入れ価格を下回る価格で

           ※「供給に要する費用」=総販売原価(=仕入れ価格+一般管理費)

           ※判断の際の考慮要素

            →価格、リベート、値引き、現品添付、ポイント等

           「継続して」→相当期間にわたり、繰り返し行われていること

           ※廉売している事業者の営業方針等から客観的に予測される場合含む

           「商品又は役務をその供給する」

 B効果要件 → 「正当な理由がないのに」

            「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」

            →公正競争阻害性→自由競争減殺効果

                         =競争者排除効果+競争回避効果

           ※差別対価とほぼ同じ、但「正当な理由がないのに」型→原則違法

           ※考慮要素

              →行為者の事業規模及び態様、廉売商品役務の数量、廉売期間、

               広告宣伝の状況、商品役務の特性等

           ※同等に効率的な競争者の企業努力によっても対抗できない「略奪的

            価格」といえるか正常な競争・企業努力・当該事業者における効率性

            を反映した価格といえるか

      ※@目的の合理性A手段の相当性がある場合

         →正当化され公正競争阻害性は認められない

  ・季節商品の見切り販売

   →@早期の在庫処分や商品入替えの必要があり、

    A在庫がなくなるまでの期間限定ならば○

  ・新規参入・新商品販売

   →@新規参入・新商品を定着させる目的があり、

    A期間限定あればむしろ競争促進されるので○

  ・瑕疵ある商品(いわゆるワケあり、キズもの)の安売り

   →@損金コストの低減を図る目的があり、

    A瑕疵があることを明らかにしていれば○

<2条9項Bと一般指定6項との相違> 一般指定6項の特徴

 ・継続性 不要   ・「不当に」型なので原則適法

 ・仕入れ価格を上回っているが総販売原価を下回っている場合

 

不当高価購入(条文)

一般指定7項

 不当に商品又は役務を高い対価で購入し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそ
れがあること

2条9項Eロ

 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそ
れがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの

ロ 不当な対価をもつて取引すること。

欺瞞的顧客誘引(条文)

一般指定8項

 自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項につ
いて
実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させ
ること
により、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること。

2条9項Eハ

 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそ
れがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの

ハ 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。

 ※欺瞞的顧客誘引は景表法も問題になりうる。

不当な利益による顧客誘引(条文)

一般指定9項

 正常な商慣習に照らして不当な利益をもつて競争者の顧客を自己と取引するように誘引
する
こと。

2条9項Eハ 〜略〜

抱き合わせ販売(条文)

一般指定10項

 相手方に対し不当に商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自
己の指定する事業者から購入させ
、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するよう
に強制する
こと。

2条9項Eハ 〜略〜

抱き合わせ販売の要件

<抱き合わせ販売の要件>

@ 行為主体 → 有力な事業者

A 行為要件 →<前段>相手方に対し〜商品又は役務の供給に併せて他の商品又は

                 役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させること

「他の商品又は役務」 → 判断基準

@主たる商品・役務と、従たる商品・役務を組み合わせることにより、その内容や機能が実質的
に変わっているか

A市場の同一性、B通常一つの商品として販売されているか、取引慣習

「購入させる」 → 購入をを余儀なくさせることで足りる。

<後段>その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制

      すること。

B 効果要件 → 「不当に」型 基本的に他と同じだが、公正競争阻害性に注意

@従たる商品・役務(≒不要品・不要サービス)の市場→自由競争減殺

主たる商品・役務(≒人気商品・サービス)を利用して、従たる商品・役務の市場から競争
者を排除するという競争者排除効果

A主たる商品・役務の市場→競争手段の不公正

不要な商品・サービスも購入せざるを得ない点で買い手・一般消費者の商品選択の自由
が制限されてしまうという競争手段の不公正

※@目的の合理性A手段の相当性がある場合→公正競争阻害性は×

  ・組み合わせることで機能や効果を十分に発揮させるという目的

  ・組み合わせることでより安全性が確保されるという目的

  →これらの場合、より制限的でない他の手段がなければ@A満たす

排他条件付取引(条文)

一般指定11項

 不当に相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し競争者の取
引の機会を減少させるおそれ
があること。

2条9項Eニ

 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそ
れがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの

ニ 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。

排他条件付取引の要件

<排他条件付取引の要件> ※インテル事件→他の競争事業者と取引しないことを条件にリベートを供

@ 行為主体 → 有力な事業者

A 行為要件 → 相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引

 →取引の直接の相手方が、すべての競争者と取引しないこと

「条件として」→契約までは不要、なんらかの実効性確保手段があれば○

B 効果要件 → 「不当に」「競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること」

 →公正競争阻害性→自由競争減殺効果=競争者排除・競争回避

  ・他の競争者が代替的取引先を容易に見つけ出すことができるか

  ・新規参入が困難になっているか

  ※基本的に、他の「不当に」型と同じなので、上記の点だけおさえる。


スポンサーリンク


inserted by FC2 system